私、ベジタリアンになりました



私、ベジタリアンになりました。
ベジタリアンと言っても、野菜を食らう人ではありません。それだったらベジタブリアンと呼ぶのがふさわしかろう。ラテン語の「vegetus」(ヴェゲトゥス:健全な、生き生きした)が語源だそうで、ベジタブルとは直接関係ないようです。したがって、「菜食主義」というのも、間違ってはいないが、少し誤解を招きやすい訳語ですね。
「ベジタリアンになった」というと、まちがいなく「どうして?」とか「理由は?」とか聞かれます(私もかつてベジタリアンにしつこく訊いたことがあるらしい)。でもこれは、結構鬱陶しいものです。なんせ、「ベジタリアン」の話をするたびに言われるから。だから人にはあまり言わないようにしています。こういうものは一般的にそうなんでしょうが、大した理由なんてないんです。なんとなくこっちが良いかなと思った程度でね。
体温が低いとか、脂肪がつきやすいとか、細かいことはいろいろありますよ、もちろんね。自分で殺したわけでもない動物を当然のように食べることには前から抵抗もあったしね。自分で殺せば、そりゃ煮て食おうが焼いて食おうが良いと思いますけどね。動物を殺すというのは、そりゃなかなか嫌なもんです。去年ねずみが家の中にあふれかえって、しようがないので何匹か殺しましたが、いまだに撲殺したときの感触が残ってますもんね。あの嫌な感触を乗り越えて(あるいは慣れて)それでも食うんだったら別に問題はないのですが、自分の手を汚していないものを食うことに対して、もう一つ釈然としないものが自分の中にありまして。それでも肉類が結構好きだったこともあって食べ続けましたが、別に肉を食わなくてもタンパク質は植物性のものだけでも足りるそうで、実際栄養上はほとんど問題ないらしいです。牛乳や卵も食べない「ヴィーガン」などの場合も、そうらしいです。
で、私、ベジタリアンになりました。厳密には、ヴィーガンになりました。といっても実際和食を食べていれば、ダシに鰹が入っていたり、ふりかけにさえ鰹エキスなどが入っていたりするので、こういうものには目をつぶりますが、牛乳(乳製品を含む)も卵も肉も極力食べないことにしました。これは固い決心ではないので、やっぱり肉を食いてえと思ったら、食べるつもりです。ですが、もう10日近くほとんど肉は食べておらず、牛乳も4、5日前からほとんど採っていません。私は1日に2杯濃いコーヒーを飲み、それに必ず牛乳をドボドボと入れていましたから、これが一番の難題でした。でもまあ、牛乳も入れないことにすれば、それはそれで慣れるもので、コーヒーの味もよく味わえるようになりました。要は考えようです。
体調は大して変化ありません。体重もあまり減っていません。脂肪を減らす意図もあったのですが、今まで以上に食べているせいか、体重はあまり減っていません。もっと身体が劇的に変わるかと思っていましたが、そのあたりは少し期待はずれでした。
食生活を変えて良かった点は、味覚が鋭くなった(ような気がする)ことです。肉の強い刺激がないためか、野菜の微妙な味がこれまでよりわかるようになりました。
一番困るのは外食する場所が少なくなったことです。肉も魚も乳製品も含まれていないものを供するレストランなんてあまりありませんからね。
10年ほど前、自然食レストランに誘われて、あまり乗り気ではなかったのですが行ったことがあります。そのときに食べたものが、動物性タンパク質があまり使われていないというふれこみのもので、それでも肉(のようなもの)があったので、それだけを楽しみに薄味の野菜を平らげていったわけです。それで最後の楽しみとして肉に手を着けたとたん、私は固まってしまいました。その肉に見えるものは肉ではなかった! そうです。グルテンとかいうもので作られた偽の食べ物だったのです。私は、非常に落胆して、「責任者呼んでこい」と叫びたくなりました。それ以来、こういうエセ料理は口にするまいと誓ったものです。
先日、大豆で作ったというミートボール(もどき)を試してみました。こういうのは、その自然食事件以来、ほぼ10年ぶりです。そして、やはりまずかった。これはニセモノ食品です。正直、こんなものはいらないと思いました。
ヴィーガンといっても、日本の伝統的な食事である、メザシなどの小魚は、この際除外しようとは思っています。伝統食は風土に根ざしたものです。それは否定することができません。現在の食の乱れは、安易に風土性を排除したことが原因だと思います。それに小魚であれば自分で殺せるし、罪悪感もない。
したがって厳密にはヴィーガンではありません。ですから、そういう宣言もしません。人にも勧めたり強制したりしません。食べ物の嗜好を著しく植物寄りにしたと言えば、現実に一番近いかも知れない。そんな感じの今日この頃です。

ベジタリアンに興味がある方へのお薦めの本:
『もう肉も卵も牛乳もいらない! 完全菜食主義ヴィーガニズムのすすめ』
大変良い本です。翻訳もすばらしい。なんでも、この本の翻訳者もベジタリアンになったそうです。

注:ベジタリアンを自称する人には、魚も食べる「ペスコベジタリアン」、卵を食べる「オポベジタリアン」、乳製品を食べる「ラクトベジタリアン」、卵と乳製品を食べる「ラクトオポベジタリアン」、魚、卵、乳製品を一切排除する「ヴィーガン」などがあります。私は、ヴィーガンに近いですが、小魚は排除していません(今のところは食べていませんが)ので「ペスコベジタリアン」に近いかも知れません。ま、定義なんかはどうでも良いんですがね。

投稿日: 日曜日 - 8 月 14, 2005 11:16 午後          


©