アテンションプリーズ



現在、フジテレビ系のCSチャンネル(フジテレビ721)で、1970年に放送されたドラマ「アテンションプリーズ」が放送されている。最初「アテンションプリーズ」がフジテレビ721で放送されると聞いたとき、「TBS製作だとばかり思っていたがフジだったのかしらん?」と思ったが、やはり製作はTBSだった。なんでも近いうちにフジテレビ系列でこの番組をリメイクする(上戸彩主演)とかで、そのキャンペーンとして再放送が始まったようだ。といっても2週間で全部一挙に放送するというやり方(全部で30話以上ある)で、なんとなくやっつけ仕事みたいな印象はぬぐえない。もう一つ、このドラマは大映製作のいわゆる「大映ドラマ」だと思っていたのだが、それは誤りで、東宝製作のドラマであった。「スチュワーデス物語」が大映なんで、それでこういう思い込みがあったのだろう。
このドラマは、私の幼少時代に放送されていたもので、ストーリー自体はあまり記憶にないのだが(実際、派手なストーリーはない)、いろいろなエピソードが印象に残っている。たとえばスチュワーデスが機内で食べ物を提供するときに、片手にフォークとスプーンを持ってそれで食べ物をはさんで皿に盛るというシーンがあった。主人公の見習いスチュワーデスがこれをなかなかできずへまをやらかすというシーンだが、これはいまだに頭の中に残っている。また、「雲海」、「パーサー」、「ネットイン(卓球用語)」などと言う言葉はこのドラマで憶えたのだ。
そんなわけで懐かしさもあってちょっと見てみようと思い、ビデオに撮って見たのだが、これが意外に面白い。あまりに面白くてやめられない。ついに第20話まで来てしまった。残念ながら第1回目と第2回目は見逃してしまったが(「雲海」や「ネットイン」のエピソードが出るはずなのだが残念)。
懐かしテレビ番組を今見ると、特にアニメなど、ガッカリすることも結構ある。子供の頃の印象と全然違うというのはまあ致し方ないところだ。だがこのドラマは、細部の造りが良くできていて、ネガティブな印象はない。主人公(紀比呂子)が、田舎者のお人好しでクラスのどん尻を行く劣等生でありながら、同時にムードメーカーで周囲から信頼されているという役どころで、このあたりもなかなか秀逸な設定である。「サインはV」とか「美しきチャレンジャー」とかの同時期のスポ根ものと同じような印象があった(当時の放送枠が同じ)が、設定は大分違う。紀比呂子がまたこの「田舎者のお人好し」を好演している。他のスポ根ものと同様、例によってライバルが登場するが、このドラマではかれらと対決するのではなくいかに和解していくかが一つのテーマになっている。「こういう人間関係ってあるよな」と思わせるものがあり、なかなかにリアルである。
スチュワーデス訓練所が舞台だけに、主人公を通してスチュワーデスの仕事や航空業の内容を学習できるようになっており、そういう新鮮な面白味もある。このドラマ以降、スチュワーデスの人気が急上昇したというのも十分うなずける話だ。
少女漫画でも同時期連載していたようで、原作者が脚本も書いているところを見るとドラマと漫画のどちらが先かちょっと判断できないが、少女漫画を意識したような過剰な演出もあってそういう部分では少し引いてしまう。だがトータルで見ると、登場人物のリアリティや視聴者を引っ張り続けるダイナミズム、目新しさなど、優れたドラマの要素がことごとく入っている。
80年代に放送された「スチュワーデス物語」(原作:深田祐介)も多分にこのドラマを意識して作られたんだろうが、比べるべくもない。「スチュワーデス物語」も相当話題にはなったが、それは「笑われる」ドラマとしてである。「笑わせる」ならともかく「笑われる」ドラマを作っているようじゃ、製作者側としては自分の仕事をおとしめる以外のなにものでもない。
「アテンションプリーズ」の中で、主人公が水商売の女性から「あなたの仕事も私の仕事と変わらない、ただ配膳したりするだけだろう、なぜそんなにお高くとまっているのか?」と迫られて、「私たちには仕事に対するプライドがある、厳しい訓練に耐えてこの仕事に就いているという誇りがある」と答えていた。こういう気概で仕事に取り組みたいものである。

追記1:書いた後に知ったのですが、DVDも出ているようです。ぜひレンタルでどうぞ。
追記2:ちょっと調べたところ、フジテレビで4月18日から放送されるドラマも、中心的な役名(美咲洋子など)は一緒である。もしかして同じストーリーでやるのか? なんとなく時代にそぐわないような気が……。
追記3:ザ・バーズ(!)が歌うテーマ曲(作詞:岩谷時子)の歌詞「揺れ動く愛の雲間を 一筋に続く私のエアルート、エアルート」をあらためて今聞くと、うまいねぇ、どうもと感心してしまった。ちなみに「アテンションプリーズ」の主題曲(「アテンションプリーズ」)および挿入歌(「恋かしら、なぜかしら」、「俺は飛ぶ」)は、『懐かしの青春ドラマ主題歌集 2』で聴くことができる。アマゾンでは「絶版」表記になっているが、レンタルショップや図書館であれば置いているかも知れない……。

投稿日: 木曜日 - 4 月 13, 2006 09:32 午前          


©